自治体の公式サイトというと、「予算も人手も限られていて、Webサイトの作りは古そう」というイメージを持っていませんか?
実際に測ってみたら、意外な結果になりました。全47都道府県+政令市20市、計67の自治体サイトのトップページを実測したところ、モバイル性能スコアの中央値は53点。以前に728の人気サイトを調査したときの中央値45点(日本の人気サイト728件のSEOスコアを実測して分かったこと)を、自治体サイトの方が上回っていました。
これから毎月、業界を変えて同じ計測を続けていきます。今回は第1弾、自治体編です。
調査方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 47都道府県+政令市20市の公式サイト、計67サイト(全数調査) |
| 計測 | Google PageSpeed Insights API(モバイル・PC両方) |
| 計測方法 | 全67サイトを3周計測し、その中央値を採用 |
| 計測日 | 2026年8月 |
対象は「全47都道府県+全20政令市」で、抽出や選定は一切していません。恣意的にサイトを選んでいないので、結果に偏りが入りようがない調査です。
3回計測しているのがポイントです。PageSpeed Insightsのスコアは1回だと大きくぶれるため、1回きりの計測では正確な比較になりません。どれくらいぶれるのかは記事の後半で実データをお見せします。
なお個別サイトの点数は公開していません。3回計測してもなお個別の値には幅があり、順位付けに耐えないためです。ここで扱うのは67サイト全体の傾向だけです。
結果1:モバイル性能の中央値は53点。一般サイトより高い
| モバイル | PC | |
|---|---|---|
| 中央値 | 53点 | 68点 |
以前計測した人気サイト728件全体の中央値は45点でした。自治体サイトはそれより高く、「行政サイトは遅い」というイメージは、少なくとも表示速度に関しては当てはまりません。
分布で見てもその傾向がはっきりします。
| 評価 | モバイル |
|---|---|
| 不良(0〜49点) | 38.8% |
| 要改善(50〜89点) | 61.2% |
| 良好(90〜100点) | 0% |
728件調査では「不良」が56.0%でしたが、自治体サイトは38.8%。一方で90点以上は1つもありませんでした。「極端に悪いサイトが少ない代わりに、飛び抜けて速いサイトもない」という、いかにも公共サイトらしい分布です。
結果2:都道府県と政令市でほぼ差がない
「都道府県庁」と「政令指定都市」では予算規模も担当部署も違いますが、スコアにはほとんど差がありませんでした。
| 件数 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 都道府県 | 47 | 51点 |
| 政令市 | 20 | 54点 |
都道府県だから、政令市だから有利・不利ということはなく、個々のサイトの作り方の差の方が大きいということです。
結果3:LCPが「合格」のサイトは1つもなかった
今回いちばん厳しい数字がこれです。Core Web Vitalsの主要指標であるLCP(Largest Contentful Paint、最大コンテンツの表示時間)を見ると、実態が見えてきます。
- LCP 2.5秒以内(合格ライン)を満たしたサイトは、67件中ゼロ
- モバイルのLCP中央値は20.5秒
PCで見ると37.3%(67件中25件)が合格しているので、これはモバイル特有の問題です。
パフォーマンススコア自体は「相対的に見て悪くない」のに、体感速度に直結するLCPは全滅です。この2つは別物だということがよく分かります。
自治体サイトは画像やバナー、埋め込みコンテンツが多く、それが表示を押し下げていると考えられます。LCPの改善方法はページスピードとSEOの関係|Core Web Vitalsを分かりやすく解説にまとめています。
結果4:SEO・アクセシビリティの基本項目は高得点
| スコア | 平均 |
|---|---|
| SEO | 90.5点 |
| アクセシビリティ | 90.3点 |
| ベストプラクティス | 87.9点 |
タグ設定やアクセシビリティ対応など、基本項目はきちんとクリアしているサイトが大半でした。公共サイトとしての品質基準(ウェブアクセシビリティ方針の策定義務など)が効いていると考えられます。
結果5:モバイルはPCより18点低い
728件調査と同じ傾向が、自治体サイトでも見られました。
- 91.0%のサイトでPCの方が高得点
- 差の中央値は18点
Googleの検索順位はモバイル版の評価が基準です。PCで確認して「うちのサイトは問題ない」と思っていると、実際に評価されている数字を見落とすことになります。
重要:同じサイトを3回測ると、4割は10点以上ばらついた
この調査でいちばん役に立つ発見が、これかもしれません。
今回は全67サイトを3回ずつ計測しました。その3回の値がどれだけばらついたかを集計すると、次のようになります。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 3回の値の幅(最大−最小)の中央値 | 6点 |
| 幅が10点以上あったサイト | 39.4% |
| 最大の幅 | 35点 |
| 1回の値が中央値からずれる幅 | 中央値1点/最大34点 |
4割のサイトで、3回の計測結果が10点以上ばらつきました。あるサイトは36点・69点・70点という3つの値を出しています。どれを「そのサイトの実力」と呼ぶべきか、1回の計測では判断できません。
一方で、67サイト全体の中央値は、何度測っても53点前後で動きません。個々の値はばらついても、67件を束ねると打ち消し合うためです。
ここから言えることは2つです。
- 集計値(全体の傾向)は信頼できる — たくさんのサイトを平均すればブレは打ち消し合います
- 個別サイトの1回の点数は当てにならない — 「◯◯県が1位」といったランキングは、計測するたびに入れ替わります
おまけ:計測そのものが失敗することもある
ブレとは別に、計測自体が失敗することがあります。この調査でも実際に起きました。
あるサイトが100点満点を記録したのですが、確認したところサイト本体ではなく、ほとんど中身のないページが読み込まれていました。中身がなければ当然速いので、現実離れした数字が出ます。実際にそのサイトを測り直すと39点でした。他にも、ブラウザでは500KB以上あるページが、計測では600バイトしか読み込まれていなかった例がありました。
「やけに良い点数」が出たときは、まず計測を疑ってください。自分のサイトで満点が出たのに実際は重い、という場合はこのパターンの可能性があります。
この記事の数値を3回計測の中央値にしているのも、個別サイトのランキングを載せていないのも、このためです。
あなたのサイトを測るときも同じです
自分のサイトを1回測って40点だったとしても、それが実力とは限りません。最低3回測って、真ん中の値を見てください。1回の結果で一喜一憂したり、施策の効果を判断したりするのは危険です。
特に「改善施策を打った前後で比べる」ときは要注意です。10点上がっても、それが施策の効果なのか単なるブレなのかは、1回ずつの計測では区別できません。
無料のSEO診断ツールでも、日を変えて複数回試すことをおすすめします。
で、自分のサイトは何をすればいいか
- 複数回測ってから判断する — 1回の点数はブレます。3回測って中央値を見てください
- スコアだけでなくLCPを確認する — 総合スコアが悪くなくても、体感速度が悪ければユーザーは離脱します
- 画像・埋め込みコンテンツの重さを疑う — LCPが遅いサイトの多くはこれが原因です
- モバイルで測る — PCとの差は中央値で18点。検索順位への影響もモバイル基準です
このデータの限界
- トップページのみの計測です。下層ページ(申請フォームなど)は含まれていません
- ラボデータ(PageSpeed Insightsのシミュレーション環境)であり、実際の利用者の体感(フィールドデータ)とは異なります
- 上で述べた通り、個別サイトの点数はブレます。3回計測の中央値を使っていますが、それでも個別の値には幅があります。この記事の数値は67サイト全体の傾向として読んでください
よくある質問
Q. 自治体の公式サイトの表示速度は遅いのですか?
パフォーマンススコアの中央値は53点で、一般的な人気サイトの中央値45点より高めでした。ただしLCP(体感速度の指標)で2.5秒以内を満たしたサイトは67件中ゼロで、改善の余地は大きいです。
Q. 都道府県と政令指定都市で表示速度に違いはありますか?
大きな違いはありませんでした。都道府県の中央値が51点、政令市が54点とほぼ同水準です。
Q. PageSpeed Insightsのスコアは毎回同じ結果になりますか?
なりません。67サイトを3回ずつ計測したところ、39.4%のサイトで3回の値が10点以上ばらつき、最大では35点の幅がありました。最低3回測って中央値を見ることをおすすめします。
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- ページスピードとSEOの関係|Core Web Vitalsを分かりやすく解説:LCPを含むCore Web Vitalsの改善方法を解説しています
- モバイルフレンドリーとSEO:モバイルとPCでスコアが変わる理由と対策をまとめています
まとめ
- 都道府県・政令市67サイトの実測で、モバイル性能の中央値は53点。一般サイトの中央値45点を上回った
- ただし90点以上は1サイトもなく、LCP2.5秒以内の合格もゼロ件
- 都道府県と政令市でスコアの差はほぼない
- モバイルはPCより中央値で18点低い
- 同じサイトを3回測ると4割が10点以上ばらつく(最大35点)。自分のサイトも3回測って中央値を見ること
次回は業界を変えて同じ調査を継続します。毎月の定点観測で、業界ごとの傾向や変化を追っていく予定です。